第84章 大好きのキス
眠っている俺の頬に触れる、少しだけひんやりした手。
数回指で撫でた後、やっぱり少しだけひんやりした唇が頬に触れる。
ちゅっ。ちゅっ。ちゅっ。…と。
「んっ…さと、し…」
「んふふ。しょおちゃん、起きた?」
「う、ん…ふぁ〜っ。智、何か…あった?」
「あのね、星が綺麗だから」
「星?」
「そう、星。一緒に見たくなって」
「いいよ、一緒に見ようか」
智に手を引かれ、窓のそばへ行く。
「う〜っ、寒っ」
カーテンを半分開くと冷たい空気が流れて、ブルブルっと身体が震えた。
「ほら。見てみて、しょおちゃん」
智は窓に張りついて外を見ている。
あぁ。だから手が冷たかったんだな。
俺は智の肩をそっと抱いた。
「本当に綺麗だな。星も…智も」
智の身体がビクッとしたのを感じる。
俺が智の頭をポンポンとすると、ゆっくりと顔を俺のほうに向けてきた。
潤んだ瞳もあどけない顔も…あの頃のまま。
可愛くて大好きでたまらない…
俺の智。
星を見た後、二人でベッドに入った。
スーッスーッとすぐに智の寝息が聞こえてくる。
“星を一緒に見たい”って人のこと起こしておいてさ。
まぁ、智だから許しちゃうけど。
「ホント、二十歳になっても寝顔は変わらないなぁ」
『しょちゃんはおひめしゃまねー、しゃとはおうじしゃまよー』
ふふっ。
久しぶりに思い出したよ…あの頃のこと。