第83章 あなたに染まる
講義中、俺の斜め前に座っているのは恋人の智くん。
今日もまたマイナスイオンが出ている。
イメージカラーでいえば青だと思う。
そんな智くんはいつにも増して、斜め後ろにいる俺にチラッチラッと振り向いては、ふわふわの頭でふにゃんと微笑んでくる。
か、か、可愛い。
思わずデレッとしたら、先生に当てられてしまった。
「ちょ、ちょっと智くん!」
講義終了後、さっさと教室を出ようとする智くんに駆け寄った。
「ん〜?なぁに、翔くん」
「もうっ。なぁに、じゃないよ。どうして俺のこと見てたのよ」
「ん〜」
智くんはその場に立ち止まって、俺のことをじぃっと見つめた。
「ちょ、ちょっと…なに?」
「ん〜。やっぱり赤がいいと思うんだけどな…」
「えっ、赤?何が赤なの?」
智くんは時々よくわからないことを言う。
「翔くん」
「はい」
「今日さ、翔くんちに行ってもいい?」
「いいけど…どうしたの?」
「翔くんは先に帰ってていいから。おいらは後で行くね」
「うん、わかった」
本当はいまいちよく分からないけど…。
俺は智くんに言われた通り、先に自宅に帰った。
それから1時間後、智くんは独り暮らしをしている俺のウチにやってきたんだ。
ケーキの箱と小さな紙袋を持って。
あ、そうか。
今日は俺の誕生日だったなぁ。