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キミとボク【気象系BL】

第80章 キミがいるから


Oサイド


櫻井くんから受け取ったツナマヨのおにぎりは、いつも以上に美味しく感じた。

櫻井くんの白くて綺麗な手が頭に浮かぶ。

また触れたいな、なんて。

相手は年下の男の子だ。

俺のほうが大人だし、この気持ちは抑えなきゃいけないんだろうけど…。

動き始めた気持ちとの狭間で、胸が苦しくなった。


「いらっしゃいませ〜」

今日も櫻井くんの声がする。

俺に気づいた櫻井くんが微笑みながら会釈してくれた。

それがすごく嬉しいし、いつもなら小躍りしたくなるくらいなのに…

今日は何だか胸と目の奥がジーンとして、涙が出そうになる。

「こんばんは。昨日はありがとう。ツナマヨ、美味しかったよ」

「そうですか、良かったです」

こうして仕事帰りにキミを見れるだけで…十分…なんだから…。

「あの…名前を…」

「えっ?」

「ずっと知りたかったんです…」

店内の様子に目を配りながら、俺の目の前にいる櫻井くんが頬を赤らめている。

そして小声で俺にこう言ったんだ。

「お友達から…はじめませんか?」

トクン…

年下の彼に…櫻井くんに救われた気がした。


んふふふふ…ふふふふふ…。

自分でもおかしいくらい、テンションが上がってきたのがわかる。

「大野。俺は大野です、大野智」

「大野智さん…」

「うん、そう」

「俺は翔です。櫻井翔」

「翔、くん…」

『櫻井く〜ん、こっちお願い〜』

「あ、は〜い、今行きます」

返事をした翔くんが背を向けた後、俺のほうに振り向いた。

「22時であがれるんで…初詣一緒に…」

「うん。一緒に行こ、翔くん」

「はい、智くん」

翔くんの笑顔がキラキラしていて眩しかった。


この数ヵ月、俺はこのコンビニにいる翔くんの姿を見るだけで1日の疲れが癒されていた。

そうかぁ…お客から友達にかぁ…マジかぁ…。

あの低音ハスキーボイスで「智くん」だって。

ふふふふふ。

何だか、世界が広がったような気持ちになった。

それはキミがいるから。


俺は確実にだけど…翔くんに恋をしている。




END

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