第79章 キミが作ったクリスマスケーキ
今日12月24日はクリスマスイブ。
仕事後帰宅したら、恋人の翔と二人でクリスマスケーキを作る予定をしていた。
スポンジ部分と生クリーム、デコレーション用に板チョコやマーブルチョコは事前に買っておいた。
だけど…
「翔、ごめん。今日、残業になっちゃってさ…」
「そっか…仕方ないよ。俺はさっき家に着いたからさ。待ってるね」
「うん、ありがとう」
電話を切る時、「ケーキ作っておくから〜」って聞こえた気がした。
まぁ、そんなに大変じゃないと思うから、翔1人で取り組んでも大丈夫だろう。
…なんて思っていたのだけれど。
あの電話から2時間後に、俺は帰宅することができた。
「ただいま〜」
シーン…
あれ…?
いつもタタタタタッて走って俺に飛びついてくる翔が、やってこない。
それはそれで寂しいけど、返事がないことが心配になった。
「翔?」
リビングを見渡したけど見当たらない。
ケーキ作るって言ってたからなぁ。
俺はキッチンに向かった。
なぜか電気は消えているけど、カウンターにはケーキを作っている途中の形跡はあった。
スポンジとチョコレートが開封されたまま置いてある。
「おわっ」
キッチンの奥で何かモゾモゾ動いている。
よく見ると、翔が隅っこで泡立て器と大きめのボールを抱えて体育座りをしていた。
「翔…?」
キッチンの電気をつけて声をかけると、翔はヒックヒックと泣きはじめてしまった。
「翔?どうした?」
「しゃ、しゃと、く…ふえぇん…」
なにその泣きかた…可愛い。
今すぐにでも押し倒したくなる。
「翔?どうした?」
にやけそうなるのを我慢しながら聞くと、
「しょお…失敗しちゃったの…」
ボールを差し出して、中を見せてくれたんだ。