第77章 耳をすませば
今日も青空に浮かぶ、わたあめのような雲。
美味しそうだな。
いつものように足音が近づいてくる。
寝転びながら俺は手を伸ばした。
「やっぱりここにいた…」
俺の指先をきゅっと握る櫻井の手。
その手を引き寄せると、櫻井は俺の隣に寝転んだ。
「大野くん、合格おめでとう」
「ありがと。櫻井も合格おめでと」
「ありがとう」
「今日も朝、早かったんだろ?」
「うん。乗り継ぎもね、大変でさ」
「ちょっと休みな」
「うん」
モゾモゾしてるなと思ったら、櫻井は少しずつ俺との距離を縮めてきていた。
なんだよ…ドキドキするじゃん…。
俺の右肩に、櫻井の頭がちょこんと乗っている。
この温もりは手放したくないと思った。
スースーと櫻井の寝息が聞こえてくる。
繋いでいる手をニギニギしていると、櫻井の手がカサカサしていることに気づいた。
帰りにハンドクリームでも選んでやるか。
「おおの、くん…」
声が聞こえて櫻井の顔を見ると、ムニャムニャと口を動かした後、唇が半開きになった。
ふふ、寝言か。
寝言で名前を呼ばれるなんて、めちゃめちゃ嬉しい。
お前、唇も乾燥してるな。
リップクリームも選んでやるか。
「俺といる時は甘えていいからな」
そう呟いて、俺も目を閉じた。
「いつもあなたのことを想ってるから」
右にいるキミから優しい声が聞こえた。
END