第75章 One Step
智くんが来る前に、何とかチーズケーキと軽く食べられるものを用意することができた。
お腹がいっぱいになると、また眠っちゃうかもしれないから…それだけはイヤだった。
ウチに着いた智くんがキョロキョロしている。
「あれ?親御さんたちは?」
「今日は結婚記念日だから、二人で小旅行に行ってる」
「…だから、翔の家に呼んだの?」
「た、た、たまたま今日がそうだっただけだし…いっぱい話したかったし…」
僕の言葉に智くんが口角をあげる。
「翔は、話をするだけでいいの?」
「もうっ…智くん、にやけないでよ」
「んふふ…ありがとね」
「うん…」
そんなこと言われたら…二人きりなんだって、改めて意識しちゃうじゃん。
智くんは用意したチーズケーキや食べ物をすごく喜んでくれた。
「翔は誰よりも俺の食の好みを知ってるからなぁ」
そんな風に思ってくれてたんだなって、照れくさくなった。
食事の片付けも終わり、ベッドに隣同士に腰かけて寛ぐ。
右にいる智くんの左腕が僕の左肩に添えられているから、自然と頭が智くんに凭れる形になる。
「…翔」
智くんに声をかけられてソワソワしてしまった。
「ドキドキしてる?」
「うん、してる。智くんは?」
「俺も…ドキドキしてるよ」
僕と同じようにドキドキしてくれてるんだ…。
智くんのほうに視線を向けると、バチっと目があった。
「今日は…」
「うん、いいよ…そのつもりで呼んだんだから」
どちらからともなくキスをする。
「んっ…」
はじめから智くんの舌が入ってきて、僕の舌はいとも簡単に絡みとられてしまった。