第74章 バスストップ
あっ。
また寝癖が跳ねてるよ…。
いつものバス停。
手を伸ばせば、その人の髪に届く距離にいる俺。
それができないのは・・・
バスに乗ると、先に乗っていた友達らに寝癖をからかわれてるあなた。
俺は少し離れた所から、その光景をチラ見する。
あっ…
目が合っちゃった。
嬉しいんだけど、戸惑う気持ちも混同して胸がバクバクする。
「しょぉくんもこっちにおいでよ」
俺のそばに来てまで、わざわざそんなこと言わなくったっていいのに。
だったらさ、
はじめから向こうに行くなよ…
ホイホイ行くなよ…
なんて、口に出して言えない俺。
「…早くあっちに戻れば?」
本当の気持ちと真逆のことを言ってしまうんだ。
あなたは眉を下げる。
ごめん…俺がそんな顔をさせてるんだよね。
「待ってるみたいだよ…智くんのこと」
「いいの、いいの」
でもね。
あなたの背中越し…
俺、あなたの友達らにじっと見られてます。