第70章 クリームソーダ
泣いちゃうくらい、誰かを好きになったことなんてなかった。
俺に翔くんを引き合わせてくれたクリームソーダ。
翔くんと初めて接したあの時。
傾くグラス、落ちてしまったアイスとサクランボ。
初めてのことに涙が込み上げてきそうだった俺を、包んでくれた翔くん。
清涼感と滑らかな甘さ。
可愛らしさ。
ちょっと贅沢で。
特別感があって。
翔くんは俺にとって、クリームソーダみたいな人。
これからも長く愛し続けていくよ。
「ねぇ、智くん」
「ん?」
「お互い進路先が決まったらさ…」
「決まったら?」
「その時は…その…」
「んふふ…そうしよっか」
「うん」
「あっ、でも…」
「ん?」
「その前に俺の誕生日があるなぁって」
「いつ?」
「来月…11月26日」
「じゃあ…その時に…する?」
「いいの…?」
「うん…智くんの特別な日だもんね」
「翔くんにとってもね」
「ふふっ」
美味しく美味しく…
「いただきます」
「召し上がれ」
END