第69章 あなたの魔法
「翔くん、あまり眠れてないでしょ」
「うん、寝つきが悪くて…」
さすが智くんだなぁ…。
疲れているけど睡眠できる時間は短くて。
眠らなきゃって思えば思うほど眠れない。
俺はそんな悪循環に陥っていた。
「今夜さ、魔法かけにいってあげるよ」
「魔法…?」
…5時間前、智くんとそんなやり取りをした。
魔法ってなんだろうな。
しかも、食事もお風呂も済ませておいていいと言われたんだ。
「翔くん、こんばんは」
智くんがやってきたのは22時を少し回った頃。
リビングに通すと、智くんはあらかじめソファーの上に用意していた部屋着に着替え始めた。
「智くん、ビール飲む?」
声を掛けて冷蔵庫に向かおうとすると
「いらないよ〜。翔くんこっちにおいで」
着替えを終えた智くんに手招きされた。
「翔くんは明日、夕方からでしょ」
「うん、そうだけど…」
智くんは明日は休みで。
「ゆっくり魔法にかかってていいからね〜」
「だから、魔法って何よ」
「くふふふふ」
そんな風に笑う姿も可愛いくて、癒されるんだけどね。