第64章 秋がくると。
陽射しのやわらかい朝。
ベッドで目覚めると、恋人が俺を見つめていた。
「んふ。しょーくんおはよぉ。」
「お、おはよう。」
そう言いながら頬を赤らめ、シーツで顔を隠そうとする。
俺はその手をそっと握った。
「しょーくん、さっきまで俺の顔を見てたんでしょ。今度は俺にしょーくんの顔をよく見せて。」
「だって、さっきは智くんが寝てたから…。起きてる時にじっと見られたら恥ずかしいよ。」
「じゃあ他の所を見ちゃおうかな。」
「あっ、ダメダメダメダメ〜ッ!」
シーツの中に潜ろうとする俺を、必死になって止めるんだ。
「どうしてダメなの?昨日の夜は見たり触ったりさせてくれたのに。」
「なっ…。夜は暗いけど、今は明るいから恥ずかしい。」
「まだ真っ裸だもんね。」
「もうっ。」
こんなに可愛いしょーくん。
だけど仕事はバリバリできるから、海外に出張なんてのも頻繁にある。
二人でゆっくり過ごせる時間は貴重なんだ。
つい、かまいたくなる。
俺はサイドボードに置いていた、秋になると思い出す2つのアイテムを手に取った。
「智くん、それって…。」
「うん。ドングリと紅葉。昨日落ちてたから拾ってきたんだ。懐かしいなって。」
「懐かしいって…。」
「うん。可愛い思い出。」
「可愛いのかなぁ…。」
俺は、ぷうっとしょーくんが膨らませている頬を指で突っついた。