第59章 途中下車
「俺だって、みんなみたいに甘えたかったのに。」
ちょっと拗ねてみた。
「おいらだってそうだったよ。でもさ、メンバーに触れるのと翔くんに触れるのは、全く違うから…。」
「えっ…。」
「歯止めが効かなくなるかもしれないからさ。翔くんに触れないように我慢するの、本当にやばかったんだって…。」
クスクス笑う智くんに、俺もつられて笑ってしまった。
智くんと笑いあえる。
あぁ、俺…いま幸せだなぁ。
今回のように、お互い撮影が重なるのは頻繁にあるわけではない。
寂しい思いもしたけど、ふと立ち止まって自分の想いを見つめる、いい機会になった…かもしれない。
「翔くんさぁ、今日は何の日か知ってる?」
「えっと…山の日?」
「うん、そう。だからもう一度ね、翔くんっていう最高の頂を堪能したいな。」
「あ、ちょっと…んっ…。」
俺も一緒に最高の…智くんという頂を堪能させてもらうことにしよう。
数日後…
あの日あの時。
智くんが俺の後を追いかけてきくれていて…
思いに更けれるあのベンチに座る俺を、ひっそりと見守っていてくれてたことを知った。
END