第58章 麗しきかな
「あーあ、めんどくせぇなぁ。」
俺は全寮制の高校に通っている。
そこでは夏休みの間、夜間に寮生と教師がペアで校内の見回りをする決まりがある。
ペアになる教師は、その時にならないとわからない。
俺はこの2年間で5回当番になったが、ハズレばかりだった。
見回り中ずっと説教されてた記憶しかない。
今日の担当教師は誰だろうな…。
俺はあまり期待もせず、寮から歩いて5分のところにある学校に向かった。
この時間、電気がついているのは職員室だけ。
コンコン。
ドアをノックする音が、シーンと静まり返った校舎に響き渡る。
「失礼します。今日見回り担当の大野…で、す…。」
「あ、こんばんは。キミが大野くんかぁ。よろしくね。」
椅子からスッと立ち上がった目の前の人に、俺は釘付けになった。
「櫻井…先…生…?」
「ははっ。僕の名前、知っててくれてたんだ。嬉しいよ。」
「そりゃあもう。特進クラスにイケメンの先生が来たって聞いたので。」
「そんなことないよ。大野くんのほうがかなりイケメンだし。」
白い歯をキラッとさせてにっこり笑う櫻井先生。
カッコ良くて綺麗だなって…俺の胸は高鳴りとざわつきでうるさくなったんだ。
さっきのノックのように、身体中に響き渡るくらいに。