第57章 好奇心の行方
あれから1年半が経ち、智くんは中学生になった。
僕たちの思い出の2段ベッドは、それを機に近所のお宅へ引き継がれていった。
部屋は今までと同じく一緒に使っている。
布団を並べて敷くから、夜は…お互いの布団を行き来しやすくなった。
手を伸ばすとすぐそこに智くんがいて、触れることができる距離。
僕にとっては、あの2段ベッドの梯子を通じての行き来も、ドキドキして好きだったけど。
今日は金曜日の夜。
家族揃って洋画を観ていると、よりによってベッドシーンが流れ始めた。
父さんはやっぱり前のめりになっているし、母さんは…意外にもテレビに釘付けになっている。
たしか、母さんの好きな俳優さんだったっけ。
何となくわかったことだけど…
こういうシーンを観た翌日は、父さんは機嫌がいいし、母さんは艶々している。
そんな二人は…仲が良くていいなって思う。
智くんからの視線を感じて目を向けると、テレビ画面を観ろって感じで、僕を見ていた。
えっ…。
さっきまで覆い被さっていた男性が布団に潜り、モゾモゾ動いている。
どう見ても、下半身をまさぐってるようにしか見えない。
もう一度、智くんのほうを見ると、ニヤッとしていた。
ダメだよ、これはダメだよ、智くん。
ダメなの?って顔で訴えてくるけど、ダメだから。
もう少し大人になってから…。
…今はまだ、ね。
「理想は、父さんと母さんだなぁ。」
「僕もそう思ってた。」
「んふふ。」
END