第57章 好奇心の行方
僕は智くんに体重をかけないよう、ゆっくり覆い被さった。
「優しいね。翔くん、軽いから大丈夫なのに。」
「だって…。あっ。」
智くんの手が、僕の頭を撫で始めた。
「前から思ってたけどさ、翔くんってイケメンだよね。」
「な、なに言ってるの…。こんな時に…。」
「んふふ。ムード作り…必要でしょ。」
「ムード…?」
「だってさ、あのドラマみたいに好きあってる2人じゃなきゃ。」
「智くん…。」
「…まぁ、俺は翔くんのこと大好きだけどね。」
ドキン、とした。
「でもそれってさ、弟だから…でしょ。」
「さぁ…どうかな。翔くんはどうなの?俺のこと…兄だから大好きなの?」
「さぁ…どうかな…。」
このやり取りだけで、僕の胸は複雑な思いでいっぱいだった。
僕は智くんを見つめた。
智くんも潤んだ目で僕を見つめている。
好きだよ…
大好きだよ…
智くん…。
ムード作りなんて、初めから必要なんてないんだ。
「さと…し…。」
僕はゆっくり智くんの首筋に顔を埋めた。