第56章 ボクたちのカタチ
(Sサイド)
“好きと言われた人が、返事の代わりにキスをする”
俺からキスさせるように仕向けたであろう智くんの目尻には涙が溜まっていた。
智くんにとっては俺からキスすることに意味があって、心の中ではきっと“ごめん”…なんて思ってるんだろうな。
返事の代わりのキスとはいえ、俺から智くんへの初めてのキス。
すっごくドキドキして震えてしまった。
唇がちょんと触れて、ちゅって…唇を押しつけるようにして。
すぐに離してしまったけど、この時の智くんの唇の感触はずっと忘れないと思う。
智くんが色っぽい表情で見つめるから、何だか恥ずかしくて…智くんの肩に頭を凭れてしまった。
次にキスする時は、もっと深いキスができたらいいな…なんて。
「智くん。今度出かける時はさ、俺も一緒に行っていいかな。」
「いいけど…翔は飽きちゃうかもしれないよ。」
「もっと智くんのこと知りたいし、新鮮に感じるんじゃないかって思うんだ。」
「それなら…一緒に行こうか。」
「うん。」
今夜寝る時は、俺から智くんに“好き”って言おうかな。
そしたら…智くんはどんなキスをしてくれるんだろう。
…って、なに考えてるんだ、俺。
今朝までは、こんなにワクワクする自分を想像もできなかったのに。
「智くん、おやすみ。」
「ん。」
「智くん…好き。」
ガバッ。
「うわっ…。」
上半身だけ覆い被さってきた智くんに、すぐさま唇を奪われた。
「んんっ…んっ…ふ…。」
「んっ…翔…。」
「さ…と…んっ…。」
智くんからの深いキスは、とてもキモチがよくて…全身にビビッと刺激がくるものだった。
智くん…
この先に進むのは、そう遠くはないかもしれない。
いつでもお互いを想いあえてる、俺たちだから。
END