第10章 恋ごころ
毎週木曜日の昼休み。
図書委員の僕が“貸出・返却”の当番の日。
「返却お願いしまぁす。」
舌ったらずな話し方と長くてきれいな指。
その人は…
大野智先輩。
「ありがとうございます。返却承りました。」
僕は平常心を装って、それを言うだけで精一杯。
カウンター越しのこんなに近くにいるのに、胸から上には視線をあげられない。
今度こそ、今度こそは…って毎回思うのに。
大野先輩は、あと1ヶ月で中学を卒業してしまう。
タイムリミットは迫ってるんだ。
次こそは必ず!絶対!頑張る!
だけど
翌週は昼休み終了5分前になっても、大野先輩は現れなかった。