第56章 ボクたちのカタチ
(Sサイド)
智くんに、言って欲しい言葉があることを伝えた。
黙って考え始めた智くん。
申し訳なくて、自然と視線が下にいってしまう。
「翔。」
名前を呼ばれて顔をあげると、いきなりデコピンされた。
「いててててっ。」
智くんを見ると、声は出さずに肩を震わせて笑っちゃってるし。
睨んでみたところで智くんが怖じ気づくわけじゃないけど、不意討ちされてちょっと悔しい。
「もうっ。智くん、何するんだよぉ。」
一応怒ってますアピールをしてみた。
本当にたまにだけど、悪戯っ子みたいなことをするんだよな。
だけど…
俺もそれがイヤではなかったりする。
かえって嬉しいっていうか…智くんなりのスキンシップなのかなって感じるから。
智くんの場合、本当にイヤな相手だったら関わり自体をもたないだろう。
そう思うと、一緒に住んだり同じベッドで眠ったりできる俺はしあわせ者なんだろうな。
ふと智くんを見ると、1人で頷いたりニヤッとしていた。
「翔。」
再び智くんに呼ばれたと同時に、智くんの手がゆっくり近づいてくる。
「なに…。」
さっきのデコピンのことがあるから、どうしても警戒してしまう。
すると、智くんはフワッと優しく微笑んだんだ。