第54章 忍びの…②
伊賀最強の忍者、無門。
その無門に、最近“翔(しょう)”という弟子ができた。
「いいか、翔。」
「はい、無門殿。」
「修行がしたくて目をキラキラさせているところ申し訳ないが、今日はお前は見てるだけだ。」
「見てるだけ…。」
いつものキリッとした眉が下がり残念そうな翔の表情は、まるで子供のようである。
「翔が手裏剣を持つのはまだ早いからな。」
「はい…。」
無門がいざ手裏剣を投げ始めると、翔は手裏剣を持つ無門の手や手裏剣を放つ無門の指の綺麗さにうっとりした。
色黒で骨格は男らしい手なのに、細くて長い指。
あぁ、あの手で…指で…この身体に触れてほしい…
翔の身体は疼き、中心は熱をもちはじめた。
身体がブルッと震え、両手でその身体を抱き締める。
無門は翔のおかしな様子に気づいた。
「翔、どうした?」
無門の手が翔の肩に置かれる。
頬を紅色に染める翔。
「どうした?震えてるし、頬が赤いぞ。熱でもあるのか?」
無門の手が今度は額に当てられる。
「うーん。熱はないみたいだな。塀登りの練習で疲れもあるのだろう。今日は帰って真っ直ぐ寝たほうがいい。」
真っ直ぐ寝る…に疑問を持ちつつも、無門が身体の心配をしてくれるのは嬉しかった。
ただ、無門の手が額から離れていくのを、妙に寂しく感じる翔であった。