第50章 かき氷のように
「無理させちゃったな。」
汗で張り付いている翔の前髪をかきあげる。
「ううん。大丈夫。智くんが優しくしてくれたから…。」
俺の胸で顔を隠す翔。
「んふふ。照れてるだろ。」
「そんなこと…言わなくていいから…。見ればわかるでしょ。」
「んふ。可愛いな。」
「可愛くなんか…ありがと。」
その後、それぞれシャワーを浴びて。
残った食べ物は冷蔵庫に入れて。
翔が薬を飲むのを見届けた。
「翔、おやすみ。」
「おやすみ、智くん。」
俺は一緒に寝ても良かったんだけど、翔が風邪を気にして…お互い自分の部屋で眠ることにした。
ベッドに横になると、頭に浮かぶのは翔のことばかり。
翔の甘いマスク。
翔の甘い香り。
翔の甘い声。
翔の身体、体温。
それはまるで、かき氷のシロップのようで。
そして俺は、シロップの虜になり、溶かされていく氷。
俺たちは兄弟だから…冷たさは冷静さを持てってこと、なんだろな。
翌朝、朝の光で目が覚めた。
身体を起こし、うーんと伸びをしていると、
「智くん…起きてる…?」
翔が部屋に入ってきた。
「翔、おはよ。」
「おはよう、智くん。」
ちゅっ。
どちらからともなくキスをした。
「体調はどう?」
「うん。熱ね、下がったよ。」
翔がベッドに腰掛ける。
俺は後ろから翔を抱きしめた。
「あっ、ホントだ。熱くない。」
「ねっ。」
ニッコリ微笑む翔は、今日も甘さでいっぱいだった。
END