第48章 そのままでいい
翌朝、珍しく俺が先に起きた。
翔くんはクローバーのペンダントを、手にキュッと握って眠っている。
その姿が可愛くていつまでも見ていたい。
だけど、そろそろ会社に行く支度をしないといけない。
「しょ…。」
声をかける途中で止めた。
ただ起こすのではなく、なんだかイタズラしたくなったんだ。
ペンダントをそ~っと取ろうとすると、翔くんの指が追いかけてくる。
それを数回繰り返していたら、翔くんが目を覚ました。
「さ、と…おはよ。」
「おはよう。翔くん。」
翔くんは、起きてからの行動が早い。
あっという間に、スーツ姿のキリッとした翔くんになった。
クローバーのペンダントは、さすがに会社には着けてけないから、玄関の棚の小さなケースに寄り添うように2つ並べて置いた。
1週間後。
俺は外回りから直帰で帰宅した。
玄関には、きちんと揃えてある翔くんの靴。
「ただいま~。」
靴を脱ぎながら言うと、パタパタと足音がしてリビングのドアが開いた。
翔くんの腕の中には、テーマパークの薄茶色の女の子のほうのくまのぬいぐるみ。
知り合いにプレゼントしたいからと話して…まぁ本当は自分になんだけど、テーマパークに行った友人に買ってきてもらったらしい。
「どうどう、智くん。可愛い?可愛いよね。」
ニコニコ嬉しそうに抱っこしている翔くん。
「うん。可愛い。翔くんが可愛い。」
「えっ…あっ…んふ。」
俺は、ぬいぐるみとともに翔くんを抱き締めた。
それからも、ウチには少しずつ可愛い物やキラキラした物が増えていった。
その度に翔くんは“ごめんね”って言うけど、気にしなくていいんだよ。
だってさ…
一番可愛いもの、キラキラしたものを手にしているのは、俺なんだと思うから。
ねっ、翔くん。
END