第48章 そのままでいい
「ねぇ、智くん。」
「ん?」
「これ…どうかな?」
「いいよ、すごく。」
「ふふっ。ありがと。」
キミにとって、かけがえのない時間が流れる。
もちろん、そんなキミを見ている俺にとってもだよ。
…翔くん。
俺には同い年の男の恋人がいる。
翔くんと俺は、会社で知り合った。
付き合ってから3年、一緒に住むようになって1年が過ぎた。
翔くんは色が白くて、目がくりっと大きくて、唇がぽってりしてて、一瞬女の子かと思ってしまうくらい美人さん。
だけど、男気があって声も低音ハスキーボイスで、男の俺から見てもカッコいい。
仕事もできるから、後輩はもちろん先輩や上司にも気に入られてるんだ。
そんな翔くんの秘密に気づいたのは、付き合ってから半年が過ぎた頃だった。
真面目な翔くんだから、日々葛藤の中で生きてきたんだと思う。
引っ越しの時の荷物の中にも、それらしき物は何もなかった。
それは翔くんのうちに秘めたものだから、表立ってはわからない。
俺は翔くんをずっと見てきたから気づいたけど…。
翔くんの行動の節々には、秘密を隠そうとしている様子があった。
だから俺は、気づいていないふりをしていたんだ。