第46章 不器用な俺たち
後処理を終え、お互い洋服を着る。
「翔くん。腰…大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」
「それなら良かった。」
何だろうな…洋服を身に纏っていく姿も、そそられるというか。
翔くん、色気があるからかな…。
俺が見ているせいもあるんだろうけど、さっきまで身体を見たり触れたりしていたのに、翔くんは「恥ずかしいから」って言って、隠しながら着替えているんだ。
俺と目が合うと、
めっ。
ってする表情がすごく可愛くて。
だから、何度でも目を合わせたくなるんだ。
「翔くん。」
俺はパンツ一丁で翔くんを呼んだ。
「このグレーのパンツ、あの時、翔くんが見たパンツだよ。」
「なっ…。」
翔くんは顔を真っ赤にして、後ろを向いてしまった。
俺は背中から包むように、翔くんを抱きしめた。
「翔くん。あの時、声をかけてくれてありがとう。」
「智くん…。」
俺は翔くんの肩越しから顔を近づけて、口づけをした。
「んっ。」
「んっふぅ…。」
その時、翔くんの家の玄関がガチャッと開く音がした。
お互いビクッとした。
「母さんだ。」
俺たちは身体を離した。
「翔~、お友だちが来てるの~?」
ほぼ着替えができていた翔くんはベッドのシワを直しはじめた。
俺は急いでズボンを履いた。
足音が段々近づいてくる。
シャツの袖に手を通したけど、慌てているせいもあって、ボタンがうまくはめられない。
コンコン。
もう間に合わない…。
そう思った時、
「これ着て。」
翔くんが咄嗟に、机の椅子に掛けてあったジャージを俺に羽織らせてくれた。
「開けるわよ~。」
ガチャッ。
「母さん、お帰りなさい。」
ドアの前に立ち、俺の盾になってくれている翔くんの後ろで、俺はジャージのファスナーをあげた。
「お友だち?」
「あっ、うん。そう。友達…。」
後ろを振り向いてウインクをした翔くん。
俺はまたキュン…とした。
いつもドタバタする俺たちだけど…それもまた幸せに感じるよ。
END