第46章 不器用な俺たち
学校からの帰り。
電車のドア付近に立ち、少しずつ薄暗くなっている空を眺めていた。
んっ…?
視線を感じて振り向いたけど、目が合う人はいない。
気のせいかな…と思いつつ、自宅の最寄りの駅で降りた。
自宅までは徒歩7~8分。
空もだいぶ暗くなってきた。
やっぱり背後からの視線を感じて、足早に歩いた。
街灯のある住宅街だけど、辺りがシーンとしているせいか、後ろも俺と同じように足早になっている足音が聞こえてくる。
なんなんだよ…と思っていると
「あのっ、あのっ。」
と声がした。
気づきながらも無視していると、
「あのっ…すみません、ちょっと…。」
また声をかけられた。
あぁもぅっ。
俺は足を止めて振り向いた。
そこには目が大きくて厚い唇のイケメンくんがいてドキッとした。
「あのぉ…何でしょうか…。」
本当はもっと強気で言うつもりだった。
だけど、そのイケメンくんがあまりにも爽やかで綺麗な顔をしていて…俺はタジタジになってしまった。
「えっと…あの…破れてます…。」
「えっ?破れてる…?」
「はい…あの、お尻のとこが…。」
「うぇっ。マジで…?」
「はい…。」
制服のお尻の部分を触ってみると、確かに破れていた。
「ホントだ…。あっ、今日学校のベンチに座ってて、何か引っ掛かった感じがしたんだよな…。」
「半信半疑だったんですけど…歩かれてる時にグレーの…パ、パ…。」
「パンツが見えた…?」
コクッと頷きながら、イケメンくんが顔を赤らめた。
うわっ。可愛い…。
「良かったらこれ…腰に巻いてください。」
イケメンくんが赤いジャージの上着を俺に差し出した。
「あ、いいよ。家までもう少しだし。」
「ダメです、ダメです。誰が見てるかわかりませんから。」
そう言いながらイケメンくんは俺の肩にジャージを掛けた。
何?って呆気にとられてる間に、イケメンくんは駅方面に走り去ってしまった。
あ、名前も連絡先も聞いてない…。
半ば強引にとはいえ受け取ってしまったジャージ。
ふふっ。
イケメンくんの優しさを感じながら有り難く腰に巻いて自宅へと向かった。