第43章 俺の隣り
ガタン。
いつものように、遅刻ギリギリで席に着く。
金髪で制服を着崩してる俺は、クラスでは浮いている存在。
「おはよう、櫻井くん。間に合って良かったね。」
俺に話しかけるヤツなんて、隣の席の“大野智”くらい。
大野は毎朝、こうやって俺に挨拶してくれる。
だけど俺はチラッと視線を向けるだけで、言葉は発しない。
それでも大野は満足そうに微笑むんだ。
周りからすれば、挨拶を返してあげればいいのにって思うかもしれない。
俺自身もそう思ったりするけど、しない…ってか、できない。
アイツは…大野は俺の好みのドストライクなんだ。
垂れ目がちの潤んだ瞳に形の良い鼻、ツヤツヤな唇で綺麗な顔をしている。
なのに、ふにゃんと笑ったり、舌ったらずなところは可愛い。
おっとりしてるけど、運動神経は抜群でカッコいい。
だから…
顔なんて5秒、いや3秒も見れなくてチラ見がやっと。
話をしようもんなら…絶対、声が震えると思う。
3年生になって無遅刻・無欠席なのは大野のおかげ。
朝の、あの顔と声が嬉しいからなんだ。