第42章 時の過ぎゆくままに
「智くん、ありがとう。」
「えっ…?」
「僕、元々ね、智くんが通ってる高校を目指してたんです。」
「そうなの?マジか。」
「だから…合格したら…絶対合格してみせますから、その時に改めて気持ちを伝えていいですか? 」
「うん、いいよ。1年半後に待ってるよ。お互い、その時に本当の気持ちを伝えあおう。」
「それまでは…友達になってくれますか?」
「もちろん。よろしくね、翔くん。」
「よろしくお願いします…智くん。」
「じゃあ…来年ね、翔くんが合格できるように…。」
智くんが僕の肩に片手を置き、もう片方の手で前髪をかきあげた。
そして僕の背丈にあわせて屈み、
「頑張れ。」
そう言いながら、おでこにちゅっ。とキスをした。
僕は暫く放心状態になってしまった。
「んふふ。やっぱり可愛いんだよなぁ、翔くんは。」
「もう何なんですかぁ。」
智くんに恋をして、今までと違う自分の一面に戸惑うこともあるけど、それもまたいい経験に繋がってるように思えるんだ。
翌朝…
「おはようございます。大野智です。翔くんはいますか?」
智くんがウチにやって来た。
「どうしたの?」
「あ、うん…。」
智くんは、ほっぺたをポリポリ掻きながら照れくさそうな表情をしていた。
僕たちは、近くの公園に向かった。
「昨日ね、あんな風に言っちゃったけど…やっぱり今、翔くんの気持ちを聞かせてほしくなって…。」
胸がドクン…とする。
「待てなかったの?」
「うん。待てないなって思ったの。」
「どうして?」
「やっぱり100対0で、恋愛感情だって思ったから。」
この人は…なんて可愛いんだろう。
「本当に今でいいの?」
「今がいいの。」
「わかった。」
智くんが目を潤ませて僕を見ている。
それを見たら、僕も何だかウルウルとしてきてしまった。
「僕は智くんのことが大好きです。」
「俺も翔くんのことが大好きです。」
「ふふっ。」
「んふふ。」
「もう、何で泣いてるんだよぉ。」
「嬉し泣きだよぉ。翔くんだって…。」
僕たちの恋は…こういうのも有りだなって思った。
END