第40章 胸騒ぎの放課後
いつもは翔くんの可愛らしい反応が見れるだけで良かった。
毎日、甘く優しく「智くん」って愛しい相手のように呼んでくれて、優しい目で見てくれて、手まで繋いでくれて。
もういいよね。
オレンジ色から薄暗くなった美術室。
「翔くん。」
「智くん?」
「翔くん、俺たち付き合おうか。」
繋がっている手から、翔くんがビクッとしたのが伝わってきた。
俺は翔くんの返事をじっと待つ。
繋いでいた手が解かれて、翔くんの手が俺の腰に回ってきた。
翔くんの不意の行動にドキドキする。
俺も同じように、翔くんの腰に手を回した。
抱きしめ合うの…はじめてだ…。
暖かい感触と優しい匂い。
鼓動がうるさいくらいに高鳴る。
「ずっとね、恋人だと思ってたんだけどな…。」
「…え…っ?」
「だから…こう言われるかもって期待しちゃたじゃん…。」
翔くんの手が俺の頬を優しく包む。
薄暗くても、翔くんの大きな目が揺らいでいるのがわかる。
「“キスしよ”…ってさ。」
遠慮がちに顔が近づいてきて…
俺も翔くんの後頭部に手を添えた。
ちゅっ。
静かな美術室にリップ音が響いた。
END