第37章 心の窓
会社に就職して1年が過ぎた。
そんな俺にも後輩ができたのだが、新人の教育係になるのは3年目からなので、来年のことを思うと身震いがする。
それよりも、心配というか気になっているのが同期の櫻井のこと。
櫻井…櫻井翔は名門大学出身で、この会社に就職が決まったと同時に、期待の新人と騒がれているほどだった。
俺も同期として、一緒に仕事をするのをワクワクしていた。
だけど…
入社式で見た櫻井は、顔を隠すように前髪を長くしているし、どことなく覇気がないように感じた。
イメージしていたのと違うな…っていうのが、第一印象だった。
会社側も、就職活動をしていた時の櫻井とは印象が変わっていることに、戸惑ったようだ。
仕事に関しては覚えが早くミスはしないし、文句の付け所がない。
ただ、対人関係では何ていうか…人との関わりを避けているように思えた。
特に体に触れられるとビクッと反応したり、よくみると冷や汗をかいているような時もあって。
気にはなりつつも、どこまで踏み込んでいいのかわからなかったし、覚えないといけないことも沢山あって、あっという間に1年が過ぎてしまった。