第36章 桜筏(さくらいかだ)
学校からの帰りに、大好きな公園に立ち寄った。
ここは桜も綺麗で、思い出の場所でもある。
桜の花びらが、はらはらと舞っている。
散りゆく桜が儚くて…恋人の翔くんに会いたくなった。
翔くん…学校終わったかなぁ。
メールを送るとすぐ、翔くんから電話がきた。
「もしもし?」
『あ、智くん?メールありがとう。ちょうど帰ってる途中でさ。あと10分くらいで着くと思う。』
「大丈夫だよ。ウロウロしながら待ってるから。」
『え~っ。ウロウロなんかしたらキケンだよ。』
「ふふっ。キケンって…。」
『だって智くんはさ、カッコよくて綺麗で可愛いからさ。老若男女問わず寄ってくるじゃん。』
「そんなことない…。」
『そんなこと、ありますぅ~、ありますぅ~。』
「もう、翔くん。なに言って…。」
『あっ、ペットもキケンだ。』
「はぁっ?」
『ペットを口実に近寄る人いるから。可愛いですね~なんて、自分からペットに目を向けるのもダメ。』
「はいはい。」
『ちゃんとわかってるの?』
「わかってるからさ…翔くんに早く会いたいな~。」
『……。』
あっ、沈黙…ふふっ。
翔くんは電話の向こうでニヤニヤ破顔してそうだな…うん、きっとそうだ。
「じゃあ、待ってるから。」
『あっ、智くん。』
「ん?」
『好き。』
プツリ…プーップーップーップーップーッ…
本当にもう、翔くんは…。
俺も好きだよ。