第35章 恋日記
翔くんが高校生になると、顔を合わせる度に身長が伸びているのがわかった。
もう僕の目の高さまできている。
「もうすぐ智くんの背を越すかもね。」
そう言って嬉しそうに牛乳をチューッと飲んでいた。
大学とバイトで忙しくなった僕は、翔くんとはメールや電話で連絡をとれてはいても、なかなか顔を合わせるタイミングがなかった。
1ヶ月半くらい経ったある日。
僕は夕方までのバイトを終えて自宅に向かった。
ウチの玄関前に七分袖のシャツにジーンズ、サンダル姿のスラッとした人が立っている。
顔は後ろ向きで見えないけど、僕よりも5㎝は背が高そうだ。
お客さん…かな。
「あのぉ…。」
僕が声をかけると、数秒してからその人の肩が揺れだした。
ん…?笑ってる…?
「あの…すみません。どちら様でしょうか。」
もう一度声をかけてみた。
その人は肩を揺らすとともに、お腹までかかえて笑い始めた。
「あはははは。あ~もうやだなぁ。」
あっ、この笑い方と低い声…
「もしかして、翔くん?」
「もしかしてもしなくても、俺は翔だから。」
振り向いた翔くんは…めっきり大人っぽくなっていて…綺麗だった。