第7章 若葉の頃
「あっ、もうこんな時間!智くんそろそろ帰らないと。」
無事に生徒会の引き継ぎを終え、慣れ親しんだ生徒会室でそのまま話し込んでしまっていた俺と翔くん。
翔くんは生徒会長で、俺は書記だった。
生徒会室は俺たちが2年間活動した場所。
そして…翔くんに対して友達以上の感情があることに気づいた空間でもある。
「楽しかったよね。」
「何だかさみしくなるね。」
二人でそんなことを話しながら、名残惜しく生徒会室を後にした。
職員室に鍵を返しに行くと、先生たちから「2年間お疲れ様」の声に混じって
「お前たちの雰囲気、夫婦みたいだったぞ。」
なんて言われてドキッとした。
チラッと翔くんを見ると、顔だけじゃなく耳まで赤くしていて。
夫婦みたいなんて、俺は正直嬉しい。
でも俺たちは男同士なんだ。
翔くんからしてみたら、そんな風に言われたらさ、そりゃあ恥ずかしくなるよな…。
「では、失礼しま~す。」
俺たちは足早に職員室を後にし、昇降口に向かった。
俺の隣を歩く翔くんは、容姿端麗・成績優秀。
まさに王子様。
すごくモテるのに、彼女はいない。
告白された時の断り文句は『好きな人がいるから』らしい。
本当に好きな人がいるのか聞いたことがあるけど、その時は上手くはぐらかされた。
「翔くんはさ、大学では彼女作るの?」
「えっ?」
「だってさ、今よりもっと誘惑がありそうじゃん。」
「そんなことないでしょ。」
「翔くんイケメンだから、合コンにも引っ張りだこになるよ。」
…自分でそう言いながらも、胸がチクッとした。
本当は彼女なんて作って欲しくない。
でも俺たちは別々の大学に進むから、今までみたいに一緒にはいられないんだ。
「前にも聞いたけどさ…本当に好きな人いるの?」
俺のその言葉に翔くんは立ち止まり、俯いてしまった。