第32章 サクラ色の空
「俺さ、心残りがあってさ。」
「心残り…?」
「うん。そう。それを…伝えにね。」
翔くんの大きな目が俺を見ている。
トクン…トクン…
「智くんがね、言ってくれたこと…すごく嬉しかったよ。」
翔くんの目が潤んでいる。
「俺さ、東京に行ってまだ数日なのにさ。智くんのことばかり考えててさ。」
「うん…。」
「智くんは俺にとって…友達以上で…大切な人で…。」
俺と同じ気持ちでいてくれたのが
すごく嬉しかった。
翔くんの大きな目からは涙が溢れている。
「俺…勝手だよね。自分からここを離れたのにさ。」
俺は泣きながら肩を震わす翔くんの頭に
タオルを掛けて、優しく抱きしめた。
「そんなことないよ。やりたいことがあるんだろ?それがさ、ここにはなくて東京にはあるんだろ?」
「う…ん…。」
「俺はさ。いずれはさ、商店を継ぎたい…それがここにあるからさ。お互いにやりたいことがあるなんてさ、素敵じゃんか。」