第29章 素直に言えなくて
(Oサイド)
俺の腕の中の愛しい人…翔くん。
会えないのを紛らわすように
キャンバスに向かったけど、
上手く描くことができなかった。
描きたい気持ちよりも、
さみしさのほうが大きくて。
涙の粒が膜になってたこと…
翔くんだからこそ、気づいたのかな。
翔くんは俺からの返信がないまま、
俺の家に向かってくれていた。
会いたい
顔が見たい
ただその想いのままに。
それがね、すごく嬉しかったんだよ。
自分でも恥ずかしいんだけどね、
今…心も身体も満たされて
翔くん、キミに酔いしれてるんだ。
素直に言えたらいいのに…
どうして言えないんだろうね。