第29章 素直に言えなくて
(Oサイド)
翔くんがシャワーしている間にキャンバスを片付けようと部屋にきた。
1つ1つ手にとってみる。
「うーん…やっぱり違うんだよなぁ。」
何枚も描いたのに、どれもしっくりこない。
いや、しっくりこなくて何枚も描いたんだ。
どうしてうまく描けないんだろう…
そんなに風に思っていたら、後ろから
「智くん?」
って翔くんの声がした。
何枚も翔くんを描いてるの、見られちゃったなぁ。
翔くんに会えなかった日に描いた絵たち。
うまく描けないことを翔くんに話した。
そしたら…
翔くんが俺を引き寄せて、抱きしめたんだ。
ギュウッて力いっぱい抱きしめられて。
湯上がりのせいか、いつもよりポカポカ温かい翔くんが心地よかった。
「こんなに何枚も描いて…。さみしいなら、さみしいって言ってくれていいのに。」
翔くんが俺の顔を覗きこんで、そう囁いたんだ。