第25章 white love
「誰か一緒にスキー旅行に行ってくれる人、いない?」
教室で呼びかけてるけど、中々見つからない。
そうだよな、スキーの経験のあるヤツなんてあまりいないのかもな…。
元々は会社員の兄ちゃんが、仲間4人で行く予定だった。
だけど、兄ちゃんともう1人が急に出張になって、行けなくなったんだ。
代金は支払い済みだし、スキーもできるのに。
「あの…。大野くん。」
肩をポンポンと叩かれて振り向いた。
……誰だっけ?
同じクラスにいるのは知ってるんだけど、名前が出てこない。
「えっと…、櫻井です。櫻井翔。」
あぁ、そうだった。櫻井、櫻井。
頭が超良くて、瓶底メガネで、前髪がモサッと長くてうっとおしそうなんだけど、授業中によく聞くコイツの低音ハスキーボイスはわりと好き。
だけど、あまり関わったことがない。
「で?俺に何か用?」
なんだ、キョトンって豆鉄砲をくらったような顔して。
びっくりしてるのは俺のほうなんだけど。
「あ、うん。スキー旅行さ、もし僕で良ければ行きたいなって思って。」
「へっ?」
待て待て待て。
俺たち、ほとんど会話もしたことないぞ。
「えっと…スキーできるの?」
「うん。かなり上手いと思う。」
なんだよ、嬉しそうに。正直なヤツだな。
「ダメ…なのかな。」
うーっ、どうしよっかな。
「ダメだよね…。」
唇を噛んで残念そうにするなよ…。
そういうの…俺、弱いんだから。
「わかった、わかったから。行こう、一緒に。なっ?」
「うん、ありがとう。よろしくね。」
パァァ…って笑顔になってるし。意外とおもしれぇヤツなんだな。