第21章 君がいいんだ
俺には幼稚園からの幼馴染みがいる。
家が隣同士で、かれこれ30年近くの付き合いになる。
お互いに独身。
まぁ…俺は敢えて独身を貫いてるけど。
好きな人が、その幼馴染みで男だから。
あいつの…翔くんの傍にいたくてずっと実家暮らしをしていた。
翔くんも実家暮らしだったから、いつでも顔を会わせられるそこから離れたくなかったんだ。
3ヶ月前までは…。
築年数がだいぶ経っている実家を引っ越すことになり、それを期に俺は独り暮らしをするハメになった。
新居は以前と1駅しか違わないけど、俺にはだいぶ開いているように思える。
当たり前だけど、翔くんの声が聞こえないし、部屋からの影も見えない。
翔くんとはたまにメールや電話はするけど…会いたいよ。
あれからまた2ヶ月ほど経って、独り暮らしにもだいぶ慣れてきた。
♪プルル…
携帯が鳴った。
翔くんからだ。
「もしもし?」
「智くん、どうしよう…。」
ちょっと情けない声の翔くん。
何があったんだろう…。