第103章 LOVE LOVE LOVE
「しょーくん、帰ろうか」
ボーッとしていると、いつの間にか智くんがそばに来ていた。
「あ、うん」
いつも以上に智くんを意識してしまって、ソワソワしてくる。
「どうしたの?」
「ううん、何でもない」
そう言いながら、右肩に掛けているスクールバックの持ち手をグッと握り直した。
一歩一歩進む度に、智くんがくれたキーホルダーが弾んでいる。
左側を歩いている智くんの手と僕の手が、時々触れていて。
繋ぎたいけど繋げないのがもどかしい。
…男同士だもんな。
だけど、さっき勇気をもらったから。
「智くん、ちょっといいかな」
立ち止まって智くんの正面に移動した。
右肩にかけていたスクールバックを下ろし、左手に持ち帰る。
「智くん」
「はい」
「これからも、よろしくお願いします」
「ふふ。こちらこそ、よろしくお願いします」
どちらからともなく手を出して、ぎゅっと握手を交わした。
初めて握った智くんの手は関節が太くて男らしいのにしなやかだった。
「しょーくんの手、初めて握った」
智くんが少し照れくさそうに話す。
「僕もね、同じこと思ってた」
ぷっと笑いあいながら、強く握り返した。
ふと目があってドキリとする。
好き。
やっぱりなかなか言葉にできなくて。
僕は握手していた智くんの手に一瞬だけどちゅっと唇を当てた。
友達から恋人に。
まだ始まったばかりの僕たちだけど。
来年もまたこうして、僕は僕なりに、智くんは智くんなりに、気持ちを伝えあえたらいいなって思う。
「姉ちゃんに教わっとくからさ。来年は一緒にチョコ作ろうか」
「うん。楽しみにしてる」
END