第103章 LOVE LOVE LOVE
(Sサイド)
智くんがくれた、ハート型で『翔』の文字が入ってる手作りのキーホルダー。
チャイムでかき消されてしまった“俺の、、”の言葉の続き。
「俺の気持ち」
智くんが自分の胸に手を当てながら、そう伝えてくれた。
言葉の1つ1つが胸にじわりじわりと沁みてくる。
あ、やだ。
どうしよう。
胸がいっぱいで声にならない。
そんな僕を、智くんが不安げな表情で見ている。
智くんにとってこの沈黙は、僕以上に辛い時間に感じてるかもしれない。
それはわかってはいるんだけど。
智くん、ごめんね。
言葉がつまって出てこないんだ。
膝に感じる重み。
そこにあるのは、開きかけのスクールバック。
中には青い包装紙に赤いリボンの小さな箱が入っている。
僕はバックの中に右手を入れて、それに触れた。
『Dear S ☆ From S』
リボンに挟んだメッセージカード。
名前で書こうか悩んだ末に、イニシャルにした。
…男から男へのチョコレート。
イニシャルにしたのは“Dear”だけじゃなくて“From”も入れたかったから。
僕からの気持ち、っていうのを僕自身が一番拘っていたんだと、いま改めて気づいた。
僕は左手でバックを押さえながらゆっくりとそれを取り出し、智くんの机にあるお弁当箱の横に置いた。
「…翔くん?」
智くんが目を見開く。
何か言わなきゃって思うけど…
そう思えば思うほど、なかなか言葉が出てこなかった。