第6章 四次試験の始まり
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フッ
あたりを照らす焚き火が消え、辺りには闇が広がった。辛うじて星の光で、俺達がいた場所が見えるくらいだ。
「…………っ!?」
現れたのは、禍々しい殺気を出したヒソカだった。いつもの飄々とした顔つきとは違い、目はぎょろっと辺りを目ざとく見始める。
「…………まだ温かい……」
焚き火を調べ、ゆっくりと様子を伺うヒソカ。殺気が重くのしかかってくる。兄貴とはまた違った禍々しい殺気……。俺はなんとか震えを抑えようと、丸くなった。だが、震えは収まらない……このままじゃ……
「………そこにいるの……かな……」
ヒソカが感じ取った。……ヤバイヤバイヤバイ!!!!完全に油断していた…どうする…
全力で姉貴を連れて逃げるか?それとも戦う?どちらもダメだ。あのヒソカでは無理だ。何かヒソカの気を引くものがあれば………引くもの……そうだ…姉貴を……囮にすれば………。そうすれば俺は…俺だけは。
「……そこに…いるのかい??」
「………っ!?」
俺は今何を考えた?姉貴を見殺しにするって言うのかよ!!
「……………」
一歩、一歩とヒソカが近づいてくるのがわかる。もうダメだ…。そう思った瞬間、気づいたら俺は姉貴の腕の中にいた。姉貴の単調な心臓の音が聞こえてきて、そして姉貴の温かい体温も感じられた。そしていつの間にか震えも止まり、上手く気配が消せるようになった。
「…………気のせいか……?」
荒々しいヒソカは、一瞬にして消え、そしてしばらく時が流れた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」
遠くで誰かの叫び声が聞こえて、やっと俺は息をつくことが出来た。アレは俺らの叫び声だったかもしれない。そう思うと、ゾッとした。
「キル、大丈夫?」
姉貴の心配そうな声が聞こえ、そこでやっと今の状態に気づいた。
「は…離せよ!!!!」
俺は慌てて姉貴から離れた。顔に熱がこもり、恥ずかしさが頭を支配した。
「びっくりしたね。ヒソカの顔、あんなに怖くなるなんて思わなかったよ」
姉貴のとんちんかんな言葉に俺はずっこけそうになった。