第1章 cloudy
久しぶりに会った椿は髪が伸びていて
可愛いというより綺麗という方が似合うと思った。
前はギャアギャア騒いでたのに
今では落ち着いて
ああ、高校生じゃねえんだな。
なんて当たり前のことを考えていた。
でも変わってないところも、もちろんある。
誰がオネエ紹介しろって言ったんだよ。
全く相変わらずだな。
なんて思ったが、
この時間が楽しいと思ったのは嘘じゃない。
「ほんと一途だね。まだ彼女のこと好きなんでしょ。」
そう言われて驚かないわけがない。
でも俺は表情には出さずに答えた。
「そんな事ねえよ。」
そんな事ない。それは俺の本心だ。
あの夏の日に俺の未練は無くなった。
「嘘ついてる。まだ好きだから、彼女に振られた理由考えてるんでしょ?」
そんなんじゃねえ。
ただ純粋にお前がなんて答えるか聞きたかっただけだ。
お前が今の俺になんて言うかが気になっただけだ。
「そんなんじゃねえよ。あいつと別れたのは卒業して1ヶ月後だ。もう未練も何もねえよ。」
椿は研磨と同じで一緒にいると安心する。
一緒に話せばこれでもかっていうくらい笑える。
馬鹿やってたのも全部
研磨と椿とだった。
そういえば椿と話しているときは
イライラしても
疲れてても
どんな時でも笑ってた。
ふと、椿が俺にとってどんな存在だったのか考えた。
窓の外を見ると
幸せそうに手を繋いで歩くカップルが見えた。
「馬鹿だよな、俺。」