第1章 cloudy
長かったな〜
やっと家に着いた‥
前だったら一瞬で着いたのに‥‥。
やっぱり気まずいのは家に着くまで続いてて、
お礼だけでも言ってさっさと家に入ってしまおうか。
ちょうど、そう考えた時
「じゃ、俺帰るわ。」
いきなりだったから驚いた。
私は焦って
「うん!また明日!」
慌てて言った一言は
何も考えずに言ったものだったから
自然な笑顔を向けることができた。
クロは既に歩き始めてたから
私の顔なんて見てなかったけどね、
クロが振り返った。
何だろう。と考える。
「おう、また明日。」
それだけだった。
そして、クロはまたすぐに歩き始める。
そんなことを言うために
わざわざ振り返ってくれたこと。
それが何だか嬉しかった。
だから、すぐには家に入らずに
少し見送ってから玄関のドアに手を伸ばした。
パタン‥‥。
玄関のドアを閉めた瞬間思い出した。
「あ!お礼言うの忘れた‥ 。あー!言えば良かった‥‥ 。」
後から考えれば、
そんなことかって自分でも笑っちゃうくらいのことだけど
そんなことまで考えられるほど私は大人じゃなかった。
その後、お風呂に入りながらも
私のちっぽけな後悔は続き
もし、お礼を言ったらもう少し話せたかな。
少しは気まずくなくなったかもしれない。
改めて思い出す。
(また明日。)
今まではなんとも思わなかった一言が、
今こんなにも嬉しく感じる。
それだけじゃない。
クロは私に、嫌ってるわけじゃない。と言ってくれた。
私が嫌われてなかったこと。
喜ばずにはいられない。
でも、同時に新しい疑問が浮かんできた。
なぜ私に素っ気なくするのか。
あの理由がほんとうだとは思えない。
それが理由であんなに態度が変わることがあるのだろうか。
クロが嘘をついているかもしれない。
そう思うと、なんか切なかった。
クロのことを諦めればこの想いは無くなるのかな。
もしそうなら、関係が戻る前に諦めてしまいたい。
また、好きになってしまう前に。