第9章 拷問 ~前編~
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数週間後、セバスチャンから上がってきた報告は、私の期待を裏切らないものだった。
「お嬢様、報告いたします。矢田夏雄はやはり、城本美沙と、不倫関係にあるようです。まぁ、配偶者がいるのは矢田夏雄のみのようですが。」
そう言って、セバスチャンは、幾らかの写真と、音声データを提示してきた。
矢田夏雄と城本美沙が、ラブホテルへ入っていく場面や、どこかのホテルの一室で、体を寄せ合っている場面など、誰がどう見ても「浮気」だと分かるような、見事な証拠写真だった。セバスチャンは、これらの写真をどのようにして撮影したのかが気になった。そもそも、角度的に、この写真なんかは無理ではなかろうかと思うものもあったのだが、そこは悪魔の成せる業なのだろう。
音声データも、再生してみる。
『――――、――――、ははは、――――いやいや、あの――――、城本、だろ―――――? アイツも、面倒なときあるぞ?――――、ちょっと、遊んでやっただけなのに、最近は――――、大きな顔し出しやがってさ―――――こっちにゃ、妻も子どもも、いるっつの――――これだから、若い女は面倒―――――勘違いしていくのが、鬱陶しい―――――、もう、飽きてきたしなァ―――――来月には、俺も転勤――――――、潮時だな―――――、はははは』
盗聴だからか、所々音声が乱れて、聞き取りづらい部分はあった。けれど、これは間違いなく、矢田夏雄の声だ。それに最早、疑う余地も無い会話内容だ。
「あとは、これが、矢田夏雄氏の妻で、こちらがその息子のようですね。名前はそれぞれ、喜美江(きみえ)さん、博史(ひろし)くん。」
セバスチャンは、矢田夏雄の奥さんと、子どもの写真まで、きっちり撮ってきていた。
「……セバスチャンは、すごいね。」
「お褒めにあずかり、光栄です。」
私の言葉に対して、セバスチャンは、事も無げに返した。
「さぁ、楽しい宴を始めましょう。今日から、面白いパーディーを始めるのよ! ……早速だけど、まずは、その博史くん! 子どもを誘拐してきましょう!」
鎮まらない興奮。これから起こることを考えただけで、躰の全てが震えるほどだ。特に、子宮の辺りがキュンとしてしまう……!