第8章 不可逆
私自身も、藁でできた虫かごなんて、初めて見た。藁はあまりきちんと編まれておらず、所々、隙間が空いている。でも、これなら空気も自然に入れ替わるし、良さそう。私は、藁と藁の間にそっと指を入れて、蝶々を見る。中には、美しい、青い蝶々が3匹、入っていた。日本にいる種類の蝶々じゃないのか、その辺りはよく分からないけれど、大きな羽を持った蝶々が、虫かごの中で羽ばたいていた。その姿は、まるで芸術品のように美しかった。
「わぁ……。綺麗……。」
私は、その姿に、心を奪われてしまった。セバスチャンはこういった具合に、美しいものを選ぶという事に、長けているように思う。なんだかんだで、部屋の内装なんかも、最近はセバスチャンのセンスに任せっきりになっている。私なんかよりもセンスがいいし、お洒落だし、何よりも手先が器用だから、圧倒的に向いているのだと思う。
「お気に召していただけましたか?」
セバスチャンは、静かに微笑みながら、尋ねてくれた。だから、私も笑顔で返す。
「もちろん! さぁ、ピクニックへ行きましょう!」
私は、ハンドバックにボトルを入れて、手には虫かごも持って。足取りは軽やかに、夜の街へ繰り出した。
セバスチャンと一緒にやって来たのは、今は使われていない、廃ビルの屋上だった。セキュリティーがザル同然だったこともあり、私でも簡単に、人目に付かず上ってくることができた。まぁ、階段は少ししんどかったけれど。