第8章 不可逆
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それからは、早いものだった。元々下着も何も身に着けていなかった私は、早々に一糸纏わぬ姿にされ、以前のように快楽を与えられた。でも、もう、ただ触られるだけでは、満足できない。私の奥深くを、貫いて、水分補給させてくれないと、きっとダメだ。
「あ……、んッ……!せば、セバス……、ちゃ……!」
息も絶え絶えになりながら、セバスチャンの頬に手を伸ばす。セバスチャンは、不意に口の端を吊り上げた。
「もっと、ですか?」
頭の中に響いてくる、涼しい声。私の肌に触れる、温度のない指先。これは、人間のモノではない。この世のモノではない。でも、今はそれが心地良い。
「さぁ、何がご所望ですか? キリエお嬢様。」
「はぁ……、はぁ……、あ、セバスチャ……ン、っく、奥に…、奥に挿れてぇ……ッ!」
この渇きを前にして、私に恥じらいなどは無かった。
セバスチャンは、自分の衣服を一切乱すことなく、また私に“ソレ”を見せることもなく、私の奥を一気に貫いた。その質量に、私と、私の躰は悲鳴を上げた。
「っき、いゃ、あああああああああああああああああ―――――――――っ!」
悲鳴にも似た声しか、出なかった。久し振りの“行為”という事もあってか、秘所が燃えるように痛い。おかしいな。私は処女なんかじゃなかった筈なのに。
長い時間―――――いや、正確な時間なんて全く分からないから、主観的な時間感覚でしかないのだけれど――――――ひたすらに揺すぶられて、頭の中がトびそうな頃に、漸く私のナカに、粘り気のある液体が放たれた。悪魔でも、射精ってするんだなぁ……なんて、この際どうでもいいことを、靄(もや)のかかった頭で考えていた。
「如何でしたか?」
セバスチャンは、相も変わらず息ひとつだって、乱していない。衣服の乱れも全く無い。私はもう、久し振りの性行為に疲れ果てて、息も絶え絶え、っていう感じなのに。
「あ、うん……。きもち、よかった、よ……?」
幼い言葉で、感想を述べてる。もう、へとへとだから、うまいことなんて言えない。
動かなくなった躰。霞んでいく意識。落ちる瞼。微睡んでいく私。
――――――夢の中。真っ暗な夢の中で、私は知らず、この身を焼かれていた気がする。