第8章 不可逆
自宅に着いてすぐに、風呂に入った。その間に、セバスチャンは事後処理や何かをしてくれるらしい。本当に、優秀な存在だと思う。私がいかに無計画に殺人を行おうとしても、事前準備はおろか、後片付けまでこなしてくれるなんて。でも、今はそんなことよりも、この精神に拡散した飢餓感をこそ、何とかしないといけない。
「キリエお嬢様、髪を乾かさないと、風邪をひきますよ。」
「うん……。」
セバスチャンの言葉に、生返事をしながらも、私の頭は完全に別の事を考えていた。
「ねぇ、抱いてよ。」
明日の支度だろうか? 何かの仕事をしていたセバスチャンの背中に、私はそんな言葉を投げかけた。
「えぇ。構いませんよ。お嬢様……?」