第7章 凌辱 ~後編~
「セバスチャン、応急処置をお願い。」
「? 応急処置、ですか? えぇ……。分かりました。従いましょう。」
セバスチャンは、私の意図が理解できないといった具合だったけれど、黙ってその指示に従ってくれた。
そして、応急処置が済んだ直後、私は金本マオを思いっ切り蹴りつけた。
憎悪の増幅が、止まらない。止めてなるものか。
「お前の!――――ッ、所為(せい)で! お前らの、ッ、所為でッ! わたし、は! こんな、ふうに、ッ! なったの、に、ッ!!」
金本マオを断続的に踏みつけながら、それでも言葉は止めない。
「自分だけ、適当、にッ、ラクに死のうとか、殺して、貰えるだとかッ! ムシが、良すぎる、ッ!」
はぁ、はぁ、と、上がるのは私の呼吸。そうだ。私は、本当はこんなことがしたいんじゃない。私はただ、普通に、静かに暮らしたかっただけだったのだ。普通に働いて、普通にお給料が貰えて。贅沢はできないし、特別大きな幸せがあるわけでもない。でも、平和に、穏やかに。当たり前の日常を、ささやかに生きていく。時に、哀しいことや辛いことがあったとしても、その中にだってあるはずの、小さな幸せを見つけて、噛みしめて。そんな人生を、望んでいた。あの日々、毎日のこと、私は好きだったのに。それなのに――――――!!
渇く。渇く。渇く。
今の私は、何だ? こんなにも、私のナカは渇いている。この飢餓感は、どこから来るものか?分からない。でも、もう、駄目だ。私は、この私は、止まれない。止められない。止まらない。この渇きが、飢餓感が満たされるまで、私はもう、止まらない。止まることをしない。