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ゆりかご 【黒執事 R18‐G】

第6章 凌辱 ~前編~


「お~い。聞いてる?」
 私は、わざとらしく、金本マオの顔の前で、手を振ってみた。知らない筈なんて、無いんだけどね。
「仕方ないか……。じゃあ、話題変えよう。恋人……、茨木翔は元気?」
「!……、な……!?」
 これには流石に、金本マオの眼の色が変わった。面白いなぁ……。私は、心の奥底が、うずうずと騒ぎ出すのを感じていた。
「最近、職場にも来てないんでしょう?マオさんってば、毎日茨木翔に連絡してるのに、一向に返事が返ってこないんでしょう?恋人同士なのに、辛いよね。」
 私は、心にもないことをつらつらと並べ立てた。
「―――――なんで、知って……?」
 金本マオの声は、軽く震えていた。まぁ、面白いので、そのまま放っておくけど。
「ん?だって、こんなに毎日、熱心に連絡入れてれば、ね?勤務時間中でも、入れてるよね?1日にして10回以上してるよね。返事だって全く返ってきてないのに、すごいよね。でも、端末のGPS機能も切れてるから、位置情報から相手の位置も探れないし……。マオさんも大変だね。」
 私は、苦笑してみせた。どうだろう。私はきっと、上手に演技できていない気がする。
「逢いたい?――――茨木翔に。」
「! 知ってるの!? 彼の居場所!」
 勿論私は知っている。あの世だ。
「うん。茨木翔は、死んだよ?」
「―――――は?」
 刹那、金本マオの時間が、止まったようだ。
 私は、ふんわりと微笑んでみたけれど、多分、これだってあまりうまくできていないだろうな。
「意味が、わかんない……。」
 金本マオが、やっとぽつりと呟いた言葉は、たったそれだけだった。


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