第6章 凌辱 ~前編~
「きゃあっ!?」
ガタン、と音がしたかと思えば、金本マオの手にあったはずの携帯端末は、今や床の上だ。しかも、画面はバキバキに割れ、食事用ナイフ(シルバー)がそのど真ん中に刺さっているという有り様だ。
「な、なに……!?」
これには、金本マオも絶句だった。正直、私ですらも何と表現していいのやら分からない光景だった。セバスチャンが、食事用ナイフ(シルバー)を投げ、金本マオの携帯端末ど真ん中へ命中させたのだ。とてつもない早業だった。私の眼の前を、銀色の線が横切ったかと思えば、携帯端末が破壊されていた。それよりも、セバスチャンは、いつの間にそんなものを仕込んでいたのか。そして、なぜわざわざ食事用ナイフ(シルバー)なのか……。今すぐ問いたいところだけど、今話し出すと話が逸れる気がするので、やめておこう。
「警察を呼ばれるのでしたら、どうぞ。どうやって呼ぶのかは存じ上げませんが。」
セバスチャンが、どこか楽しげに、金本マオを見やった。金本マオは、顔を青くしながら口を閉ざしている。
「ガールズトーク、しよ?」
私は、つとめてニッコリと微笑んだ。一方の金本マオは、顔を引きつらせている。金本マオは、何の返事もしなかったが、私はもう勝手に話を進めることにした。
「そう言えばさ、最近仕事はどう?うまくいってる?楽しい?……ホラ、私、退職しちゃったじゃん。知ってた?」
「……。」
金本マオは、身の危険でも感じているのか、口を開こうとしない。