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ゆりかご 【黒執事 R18‐G】

第6章 凌辱 ~前編~



 防音室に、どうやら鍵はついていないらしく、ドアを開ければ誰でも入れるものだった。私は、迷わずに、防音室のドアを開けた。
 今の今まで、私とセバスチャンの侵入になど全く気が付かなかった金本マオも、流石にこれには気付いたようで、その演奏は一瞬で止まった。

「―――――!!」
 金本マオは、振り返ってこちらを見るなり、まるで呼吸すら忘れたかのようにして、息を詰まらせた。そりゃあそうだろう。人間、本当に驚いた時に声なんて出ない。
「……!ぁ……!――――――ッ……!?」
 口を動かしているが、それ以上の事は何も言えないようだ。その慌てふためきようと言えば、安い映画の、三文役者の演技の如し、といった具合だ。
 さて、見た目よりも、防音室は広かった。私とセバスチャンは、すっかり防音室へと入り込み、ドアを閉めた。大きな声を出されたらどうしようとか考えていたけれど、よもやカモが自分から鍋の中に入っている状況だなんて。こんなに都合のいい話というのも、無いのではないだろうか?

「こんばんは。久し振り~。お邪魔してます。」
 にっこりと笑顔を作って、私は金本マオに挨拶をしてみた。自分で言ってみて何だけれど、本当に久し振り。もう、こんな女の顔を見ることなんて二度と再び無いと思っていたけれど、不思議なものだなと思う。あの時は、私も苦しくて、苦しくて、仕方が無かったけれど、今は違う。今は、彼女を見ても苦しくならない。辛くならない。ただ、“興奮”し始めているだけ。私のテンションは、じわりじわりと、上昇中だ。

「あれ?金本マオさんで、間違いないよね?人違い?」
 私は、近くで控えているセバスチャンへ、チラリと視線を送った。
「間違いなく、金本マオさんですよ。」
 セバスチャンは、抑揚のない声で、さらりと答えてくれた。
「んじゃ、さっそくガールズトークを始めましょうか。」
 私は笑顔を崩さないままに、オルガン用の椅子に座り続けて動かない金本マオに話し掛けた。
「け、警察呼ぶわよ……!」
 オルガンの近くにあった携帯端末に手を伸ばし、それを握りしめた金本マオが、振り絞るようにして叫んだ。金本は、震える指で端末のロックを解除した。そして、電話機能を立ち上げた、その時。


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