第6章 凌辱 ~前編~
『……晴れるでしょう。……続いて、……臨時ニュースです。昨夜未明、A市内のとあるホテルの一室内で、大量の血痕が見つかったとのニュースが入りました。血液は複数人分と見られていますが、詳しいことはまだ分かっておらず、現場には何の手掛かりも無いことから、血痕が誰のものかも分からず、捜査は難航している模様です……』
「……。」
そうだ。私は昨日、あの男と、一緒にいた女を殺したのだ。この臨時ニュースは、間違いなく、昨日の殺人に関するものだ。
私は、無言でセバスチャンを見た。セバスチャンは、特に変わりなく平然としている。
「ねぇ、これって、現場には何の手掛かりも無いって言ってるけど、昨日のだよね。」
「えぇ。間違いありませんよ。あぁ、それと、先程からこの携帯端末に、同じ人物からの連絡が、ひっきりなしに届いているのですが。」
そう言いながら、セバスチャンは懐から携帯端末を取り出した。
「……!? セバスチャン、そんなの持ってたっけ……?」
私は、朝食を食べるのも忘れて、セバスチャンに駆け寄った。
「いいえ? 昨日、あの男の持ち物から抜き取ったものです。あ、GPS機能は、此方で切っておきました。此処の位置が他人に知られることはありませんので、ご安心ください。」
「え、あ、ありがとう……。」
セバスチャンは、悪魔なのに、現代に適応し過ぎではないだろうか……。そんなものを、いつどこで勉強したのだろう……。
「この女性からなのですが、昨日の女性とは、異なる方のようですね。この名前に、覚えはありますか?」
そう言われて、セバスチャンが持っている携帯端末を覗き込む。端末の画面には――――
「金本マオ――――?」
刹那、あの日々が思い起こされた。あの、3人組の、女の、1人……!
「ご存知でしたか。」
私を追い詰めた――――――!
「それ、内容読める?」