第6章 凌辱 ~前編~
「本日は、マフィンに、エッグベネディクト、フルーツのヨーグルト掛けに、野菜ベースのスムージーを御用意いたしました。」
セバスチャンは、いつも通り、本物の執事のように振る舞っている。
「あ、うん……。」
食事は、いつも通りおいしそうだった。いや、セバスチャンの出した料理の中で、不味かったものなんて、たったひとつだって無いけれど。
「どうされましたか?ご気分がすぐれないのでしょうか?」
セバスチャンは、私の横に立って、そこから私の顔を覗き込んできた。
「え、う、うぅ……?」
「それとも、“昨日の秘め事”がお気に召しませんでしたか……?」
「―――――!!!!」
やっぱり、全部夢じゃなかったんだ!現実だったんだ!
「ぁ―――――!」
顔に熱が集中する。どうしようもない!
「悪魔との“契約”の事は、他の誰にも口外されませんように……。キリエお嬢様と私だけの、秘密ですよ……?」
「……。う、うん……。」
あ、そっちね。まぁ、口外するもしないも、私にはもう、口外できる相手もいないわけなんだけどさ。まぁ、セバスチャンがそう言ってくれるなら、私がひとりで意識しているのも妙な話だし、もういいや。余計なことは考えずに、普通にしていよう。
「お嬢様さえよろしければ、またいつでもお相手しますよ……?」
「――――――!!!!!」
そう言って笑うセバスチャンの顔は、到底朝には似つかわしくないほどに妖艶だった。やっぱりセバスチャンは、全て分かっていて、私の反応を楽しんでいたのか……!この悪魔、性格凄く悪いんじゃ……!?って、悪魔だから当たり前なのかなぁ……。だって悪魔だし……。って、もういい!
「て、テレビつけるね!!」
私の声は、明らかに上擦っていた。セバスチャンは、そんな私をみて、クスクスと笑っている。やっぱり、セバスチャンは確信犯だった……!